2019.12.16
リスティング広告を利用する際に必要な予算とその考え方~広告予算と成果が適切か判断する指標とは~
みなさんはリスティング広告をはじめる際にどのように予算を決めていますか?
どれくらいの予算をかければいいか、よくわからないという方も多いと思いますので、 この記事では「予算と目標CPAの決め方」「広告予算と成果が適切か判断する指標」についてお伝えしていきます。
■リスティング広告予算の決め方
では、具体的にはどのように広告の予算を決定すればよいのでしょうか?
「なるべくCPAを安く抑えたい」「できるだけ費用をかけずに成果をあげたい」と考えられるケースも多いようですが、ビジネスごとに考えるべき方法論がありますので 簡単に1~3の3つのステップで紹介していきます。
|ステップ1:広告の目標を決める
こちらは、リスティング広告の予算を決定するための最もオーソドックスな計算式です。
予算=目標コンバージョン単価(CPA)×目標獲得件数(CV)
この式からもわかるように、リスティング広告で予算を決める際に最も重要なのは、「目標」です。
3C分析等を用いて、訴求すべきポイントを見出した後は、しっかりとビジネスの「目標」を設定し、それを達成するためには予算がいくら必要なのかという視点で考えていきましょう。
ビジネスの目標については、こちらの記事も参考にしてみてください。
目標達成のために知っておきたい正しいKPI、KGI決定方法を解説
|ステップ2:目標のコンバージョン単価(CPA)を決める
広告の目標が決まったら、次は目標を達成のためにかけられる費用(CPA)を決めましょう。 CPAの決め方にもいくつかあるので、御社のサービスや商材にあった適切な方法を使ってください。
ここでは、主な3つを紹介します。
〇成約率から考える
契約の申込みなどがWEB上で完結する商材の場合は、「成約率」から目標CPAを考えることが可能です。
こちらはWebからの資料請求のあとに営業担当者が対応し受注が決まるような2Step営業の商材に向いています。
<計算式> 目標CPA=平均顧客単価×成約率
例えば、自動車のリースサービスで「契約の申込み」や「審査依頼」の後に商談し契約が確定すると平均150万円の売上が発生し、 その成約率が5%だった場合、 目標CPAは、150万円×0.05=75,000円となります。
〇粗利から考える
高単価の商材などリピートを前提としない場合は、単純に「粗利」から目標CPAを考えましょう。 またこの場合には、人件費やその他固定費などが引かれることを考慮し、「上限CPA」として捉えていきましょう。
<計算式> 目標CPA(上限CPA)=平均顧客単価-平均原価
つまり、平均顧客単価が100,000円の商材に対して、それにかかる平均原価が,6000円の場合、目標CPAは、10,0000円-6,000円=4,000円となります。
〇LTVから考える
ユーザーのリピートが見込める商材の場合は、LTV(ライフタイムバリュー)から目標CPAを考えましょう。
<計算式> 目標CPA=LTV×粗利率
※LTV=初回売上+2回目以降の売上×購入回数
例えば、 粗利率が50% のサービスで初期費用5万円、月額料金が1万円。最低契約期間が6か月間だった場合、LTVは、50,000円+10,000円×6回=110,000円。目標CPAは、110,000円×0.5=55,000円となります。
|ステップ3 :CPAから目的に合わせて広告予算を決める
目標CPAが決まったら、次は目的に合わせて広告予算を決めましょう。 広告予算の決め方にもいくつかあるので、御社の目的にあった適切な方法を使ってください。 ここでは、主な5つを紹介します。
〇総売上から考える
今ある総売上から何%を広告予算として使用できるのか、ということから広告予算を考えましょう。
<計算式> 広告予算=月間総売上×広告予算(5%~10%)
一般的な広告予算は、総売上の5~10%を目安としています、 つまり、1か月の売上が400万円の場合、 広告予算は、400万円×0.05~0.1=20~40万円となります。
〇キーワード単価から考える
特にB2Bのリスティング広告ではCPCが高い傾向にあり、広告予算が少なく目標のCV数に至らなかったということも起こります。 そのためキーワードプランナーで出稿するキーワードの相場を調べ、目標達成のためは月に何クリック必要なのか、ということから広告予算を考えましょう。
<計算式> 広告予算=平均クリック単価×必要クリック数
※必要クリック数=目標CV数÷コンバージョン率(CVR)
一般的なCVRは、1%を目安としています、つまり、キーワードプランナーで調べた平均クリック単価が500円、目標CV数が10件だった場合、必要なクリック数は、10÷0.01=1,000。広告予算は、500×1,000=50万円となります。
〇売上目標から考える
クリック単価やCVRからリスティング広告で見込める売上を設定し、そこから広告予算を考えましょう。
<計算式>
広告予算=平均クリック単価×必要クリック数
目標CV数=売上目標÷商材単価
※必要クリック数=目標CV数÷コンバージョン率(CVR)
つまり、月100万円の売上を目標とした場合、10万円の商材であれば、必要なCV数は10件となります。 CV数が決まったらキーワード単価から考えたときと同様に、クリック単価とCVRを設定し広告予算を計算しましょう。
〇損益分岐点から考える
広告をだして赤字になってしまっては、意味がありません。
<計算式>
損益分岐点=コスト+利益
上限CPA=損益分岐点-コスト
広告予算=目標CPA×目標CV数
つまり、単価が10万円の商材にかかるコストが4万円のとき、上限CPAは6万円となり目標CV数が10件だった場合、 広告予算は、最大で60万円となります。
〇LTVから考える
リピート商材の目標CPAを決める際にも使用したLTVですが、もちろん広告予算を決める上でも重要です。
<計算式> 広告予算=目標CPA×目標CV数
※上限CPA=利益×リピート数
つまり、1件の獲得で1万円の利益がでる商材で年4回のリピートがある場合、1年間の利益は4万円となります。
赤字となるのは、初回のCPAが4万円以上を超えた場合になるので、上限CPAは4万円となります。仮に目標CV数が10件だった場合、 広告予算は、最大で40万円となります。
★長期的な目線でのCPAの捉え方
ここまでの1~3の3つのステップで、目標CPAと広告予算について紹介してきました。
単純に売上から考える方法やリピート回数、リスティング広告特有のクリック単価などを考慮して考える方法など 御社の商材やサービスによって様々な計算方法があります。
ここで注意したいことは、これらは広告をはじめる際の1つの目安ということです。 リスティング広告最大の利点は、運用のデータが蓄積され改善を重ねていけるという点です。
初期段階では「高すぎる」と感じたCPAでも、 この後紹介する費用対効果の測定方法などを用いてPDCAの改善をはかり、 また広告経由で獲得したリストへ継続的にアプローチを行う等、長期的な目線で取り組んでいくことで、CPAに見合った利益を出していくことができます。
■費用対効果を測る指標、それぞれのメリット・デメリットについて
「目標」に合わせた広告の予算が決まりましたね。
ですが、重要なのは「投下した予算に対して効果がどの程度あったのか」ということではないでしょうか。 これを明確に把握できることが、リスティング広告の最大の利点でもあります。 ここでは、リスティング広告で用いられるROASやROI、MRなどの指標について、 それぞれのメリットやデメリット、また実際にどのように活用するのかを紹介していきます。
〇ROI (Return On Investment)
ROIとは、「広告費に対してどれだけの利益を得ることができたか」を測るための指標です。 ゼロを基準にして計算結果がプラスであれば利益が生まれていることを、マイナスであれば損失が生じていることを示しています。
<計算式> ROI=利益÷投資額(広告費)×100(%)
広告費100万円に対して利益が50万円だった場合、ROIは50%となります。 また、広告運用においては以下 でも求めることができます。
<計算式>ROI=(平均利益単価×コンバージョン(CV)-広告費)÷広告費×100(%)
平均利益単価100,000円の商品が、広告費100万円で15個売れた場合、 ROIは(100,000円×15個-100万円)÷100万円×100=50%となります。
<メリット・デメリット>
メリットは「広告費に対しての利益率」を表しているので、 どの広告で採算が良く、また採算の悪いのはどの広告なのかを数値として管理することができます。
複数の広告を運用している場合、ROIを用いることで、より採算性の高い広告への投資を高めたり、採算性の低い広告を重点的に改善したりしていくことができます。
デメリットは、長期的な利益を判断することには向かないということです。 例えば、ROIが-20%の広告X、ROIが40%の広告Yを運用していたとします。ROIの観点で判断すると利益の上がっている広告Yに投資していくべきでしょう。ですが、広告Xが長期的な施策で徐々に利益率が上がっていく場合、ROIの観点では判断を誤ってしまう可能性が高くなってしまいます。
〇ROAS (Return On Advertising Spend)
ROASとは、「広告費に対してどれだけの売上を得ることができたか」を測るための指標です。100%を基準にして、それ以上であればあるほど広告の費用対効果も高いということを示しています。
<計算式> 売上÷広告費×100(%)
広告費100万円に対して売上が300万円だった場合、ROASは300%となります。
<メリット・デメリット>
「広告の売上への貢献度」を表しているので、 メリットは、ROASが高く売上に寄与している広告に対して予算を上げたり、また低い広告に対してはクリエイティブの見直しを行うなどの改善施策の計画を立てたり、「広告戦略」を見直していくことができます。 デメリットは、あくまで売上を測る指標であるため、実際の利益はわからないということです。 広告の利益については、ROIを用いて判断していきましょう。
〇MR (media ration:メディアレーション)
MRとは、「広告費に対してどれだけ新規売上を得ることができたか」を測るための指標です。1を基準にして、広告にかけた費用をどれだけ回収できているかということを示しています。
<計算式> 新規売上÷広告費
広告費100万円に対して売上が80万円だった場合、MRは0.8となります。MRは0.8の場合、広告費の80%を新規の売上で回収したということです。
<メリット・デメリット>
メリットは、「初回売上の投資回収割合」を表しているので、 初回の売上で広告費をある程度回収する事業モデルの場合には、有効といえるでしょう。
デメリットは、競合の参入が増えてきて広告のレスポンスが下がってきた場合やリピートを前提とした事業モデルの場合には向かないということです。
■まとめ
いかがでしたでしょうか。
みなさんは、獲得コストを単純に気にするのではなく、利益率から1成約にかけられる広告コストを算出し 投資の目線で予算を考えることが出来ていましたか? 知ってはいたけど、そこまで重要視していなかった。という方も多かったのではないでしょうか。
すでにリスティング広告を実施されている方は、 ぜひ一度、今回ご紹介した長期的なCPAの捉え方や指標を用いて、広告予算の運用について見直してみてください。 御社のサービスに合わせて、具体的にアドバイスが欲しいという方は、お気軽にお問い合わせください。